第4回講演会(2019年11月23日)

即時荷重研究会 第4回講演会

健康的な生活を目指した歯科での管理栄養士の取り組み

石川 華子 先生

欠損歯のある口腔内は、患者の『生活』にさまざまな影響を及ぼす。咀嚼機能が低下するため、快適な食生活が送れなくなったり、滑舌が気になり人との会話が億劫になったり、見た目が気になって思い切り笑えなくなってしまうこともある。このような状態で過ごす生活は健康的とは言い難い。口と身体の健康は繋がっている。
欠損歯を補う方法はたくさんあるが、なかでもそんな『生活の中での困りごと』が短期間で解決し、長期にわたり健康でいられるような歯科治療となるように、管理栄養士としてサポートした症例を報告する。
口腔内に関する問診だけでなく、食生活、運動習慣を含めた生活背景を聴くカウンセリングの時間を最も大切にする。さらに咀嚼力、食事内容、身体の状態の検査と評価を行い、視覚的に患者に伝える。院内で連携をとり、歯科治療の一環として、その後の『生活』まで配慮した患者のサポートを行うことは、健康的な生活を目指す第一歩となる。

口腔機能が低下した患者の全身を視野に入れた口腔衛生指導

原野 晶代 先生

“フレイル”という言葉をご存知でしょうか?それは、加齢に伴い身体機能の低下そして、気持ち面での低下を引き起こすことです。日々、診療で私たちが身近に存在する“オーラルフレイル”の脅威は、加齢に伴い口腔機能が低下し栄養面、身体面、生活面の質に負の連鎖が生じた結果、不健康寿命に繋がります。私たち歯科従事者は病気になってからを考えるのではなく、未病の方に焦点を当て、今後起こりうること、健康は口から始まることを伝え、患者の行動変容へのサポートすることが今後の課題だと思っています。
当医院では健康寿命につなげるため患者1人1人の心理状態の変化にも着目しつつ口腔内だけでなく全身を視野に入れた歯科衛生業務(口腔衛生指導、食事指導、運動指導)を全ての年齢の方に行なっています。
今回は56歳女性、前医での歯科不信を抱えた方への全顎的治療の取り組みについて発表させていただきます。

医療としてのインプラント治療の在り方を再考する

中山 隆司 先生

世界的な超高齢社会を迎えた今、”低侵襲なインプラント治療”、”治療期間におけるQOLの維持”のみならず ”QOD(Quality of death) までをも考慮したインプラント治療” がこれからのスタンダードになると確信している。
従来の常識にとらわれず古い考えを改め、変わる時が来ている。我々即時荷重研究会はインプラント治療において患者に寄り添い、患者目線に立ち、腫れ、痛み、手術回数、治療期間が少なく術後の合併症のリスクの少ない4S-コンセプトに則った治療を目指して臨床している。4S-コンセプト(simple,small,short,safe) を達成するための手段として抜歯即時埋入、即時荷重、早期荷重は必須となる。
適正なインプラントポジション、トルク・ISQの計測、骨質によるカスタマイズドドリリング、インプラントデザインの選択基準、ショートインプラントの適用を解説しつつ、私の前歯部少数歯インプラント症例、無歯顎インプラント症例を供覧し今回のセミナーテーマである”患者の生活の質を考慮したインプラント治療”の必要性、その効果、成果を報告したい。受講される先生方の臨床の一助となれば幸いである。

デジタルは、即時荷重に使えるか?

富樫 宏明 先生

私は現在、インプラント治療のフルデジタルワークフローを完成させることを目標としています。道半ばではありますが、現在の到達点を今日は供覧したいと思います。そのきっかけとなったのは、口腔内スキャナーの登場でした。
従来インプラント治療においては、CT を用いた診断の成果を忠実に実行するためにサージカルガイドが用いられ、その普及は進んでいます。そのソースとなるCT のダイコムデータと対になるSTL データを得るには石膏模型をデスクトップスキャナーでスキャンする必要がありました。
しかし近年、口腔内スキャナーの普及により、マッチングポイントとなる歯牙情報が複数含まれているケースではモデルレスでサージカルガイドを製作することが可能になりました。また、アバットメントや補綴物制作においてもデジタル用のインプレッションポストともいえるスキャンボディを用いることで、口腔内のダイレストスキャンから行えるようになり、その適応範囲は広がっています。しかし、口腔内スキャナーは視野が限られるため、スキャンボディ間に距離があるAll-on-4 などクロスアーチのフルブリッジは適応外となります。
本講演では、インプラント治療における口腔内スキャナーの適応範囲についてお話しします。そして、皆様と即時荷重のワークフローに有効な利用法を創り出すきっかけとなれば幸いです。そして、現在国内で販売されている口腔内スキャナー6種の特徴についても触れたいと思っています。

All on 4 を再考する

吉岡 喜久雄 先生

パウロ・マロがAll-on-4 の治療概念を発表したのは2003年で、既に16年を経過しました。また、パウロ・マロは2006年にAll-on-4 用にスピーディーインプラントを発表し、2012年にはザイゴマインプラントを用いたextra-maxillary zygomatic implants の3年経過を発表しています。私は2005年にマロ・クリニックにて研修を受け、帰国後、様々な症例に対してAll-on-4 を応用した全顎無歯顎補綴を行ってきました。今回は、私がAll-on-4 を開始してから14年が経過し、当初は想定できなかった事例などを報告し、All-on-4 について再考したいと思います。

即時荷重の臨床的優位性

小濵 忠一 先生

従来のオッセオインテグレーション獲得のプロトコルは、インプラント埋入後3~6ヶ月の非過重治癒期間を設けることであった。その治療概念は、現在でも多くの症例における第一選択である。しかし、治療期間の長期化や暫間補綴物などの問題からQOLの低下を招いていたことは否めない。近年では、それらの解決策としてインプラントの表面性状や形態などの改良そして抜歯即時埋入を含めた即時荷重の臨床データの蓄積によって、埋入当日に暫間補綴物までを装着することが症例によっては可能である。とはいえ、必要不可欠とされる良好な初期固定が獲得できた場合でも、治療ゴールによっては適応が限定されることも少なくない。
そこで、本口演では、機能性の回復のみならず審美性とメンテナンスに優れた上部構造製作を治療目標とする場合の適応症の診断と有効活用できるシステムの選択そして治療戦略について具体的に解説したい。

即時荷重における Long term provisionalization の重要性について

瀧野 裕行 先生

近年、インプラント治療は様々な症例への適応が広がり、その術式には抜歯即時埋入や即時荷重など患者の口腔機能を早期に回復出来るものある。即時荷重インプラント治療は即日噛めることで患者の満足は得られますが、その反面ディスインテグレーションや清掃不良によるインプラント周囲炎などを惹起させるリスクもある。それらを回避するためには強固な初期固定の獲得、力学的因子のコントロール、清掃しやすい口腔内環境の確立が重要となり、患者本人が清掃しやすい補綴形態を歯科衛生士、歯科技工士と共に探ることが大切になる。
またデジタル機器によって歯科技工士と視覚的にコミュニケーションが取れることは、即時荷重インプラント治療を進めるにあたって、大きなアドバンテージになると考えられる。このように長期的な咬合状態や清掃性をチェックするにはロングタームプロビジョナルレストレーションが欠かせないものとなる。
今回、当院での実際の症例をもとに Long term provisionalization について考察したい。

サイナスリフトからショートインプラントへ

林 揚春 先生

上顎臼歯部において残存骨量が少ない場合、一般的には長さ10mm 以上のインプラントを用いたサイナスリフトが行われている。しかし、患者への侵襲、高コスト、長い治療期間、術後の病的状態及び合併症の危険性など多くの問題点を有する。またこの処置がショートインプラントと比べて荷重後に、インプラントの失敗を減らし成功するかのエビデンスは乏しい。
また多くの研究論文や発表においても異なるサイナスリフト法を比較しているが、これらのどの手法が他の手術と比較した場合に、荷重後のインプラントの失敗を減少させることを示してはいない。
今回、垂直骨量の少ない部位でショートインプラントを使用し、従来の長いインプラントを用いたサイナスリフトに対して代替解決策となり得るかを評価したい。


開催日 2019年11月23日(祝土)
9:30~17:00(受付9:00)
会場 浅草橋ヒューリックホール
〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-22-16 ヒューリックホール浅草橋ビル2F ≫アクセス
http://hulic-hall.com

アクセス

JR浅草橋駅 西口出口より徒歩1分
都営浅草線浅草橋駅 A3出口より徒歩2分

第4回ILSC即時荷重研究会講演会会場 浅草橋ヒューリックホール

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